2020/06/02
住宅ローン控除で、株取引で源泉徴収された所得税が還付された話です。
この【後編】では、住宅ローン控除の概要手続き方法(税務署での確定申告)と、控除枠が余っていて、かつ株の譲渡益がある場合の、所得税還付方法を説明いたします。
住宅ローン控除の概略や、還付・控除額の考察は「住宅ローン控除で株の利益を確定申告して22万円還付された話【前編】」に記載しておりますので、ご参照ください。
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Contents
住宅ローン控除の手続き方法
住宅ローン控除を受ける際は、確定申告が必要になります。
確定申告は、個人事業主が前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得、控除額、納税額について計算し、翌年の2月15日~3月15日の確定申告期間内に、税務署に申告のうえ、納税するものです。私たちサラリーマンは所得税も住民税も毎月の給与から天引きされており、毎年末が近くなると、生命保険やら家の損害保険やら、家族の税証明やらをいろいろとかき集めて会社に提出するという「年末調整」で帳尻を合わせますので、サラリーマンはやったことがないと思います。
ですが、住宅ローン控除を実際に受ける際は、初年度の確定申告が必要になります。この確定申告はいわゆる還付申告といわれるもので、通常の確定申告とは異なりますので、最大5年さかのぼって提出することが可能ですし、確定申告シーズンにやる必要もありません。
ですが、住宅ローン控除は10年間に及ぶものであり、かつ初年度の申告を済ませると、2年目以は確定申告不要で年末調整で還付手続きが行われるため、入居した翌年に申告するほうがよいと思います。もちろん、還付申告が早ければ早いほど、実際に還付されるのも早くなるため、遅らせる理由はありません。
書類が整い次第、なるべく早く動いたほうがよいでしょう。
2月15日から3月15日は確定申告で税務署が半端じゃないほど混み合いますので、1月4日~2月14日までに済ませたほうがよいです。
なにもせずに6年以上放置してしまうと、住宅ローン控除を受けられなくなってしまいますので、注意してください。
過去5年間で、住宅ローン控除の枠が余っていて、かつ株などの利益で所得税を納めていた人は、5年分の還付申告をすることで、払いすぎた所得税の還付を受けることができます。
住宅ローン控除の確定申告のやり方
確定申告のやり方ですが、インターネット上で完結するeTAXを利用する方法、確定申告書類を作成し、郵送で提出する方法、実際に税務署の窓口に持参し、提出する方法があります。
ただ、自営業で毎年確定申告をするなら別ですが、eTAXはマイナンバーカードの作製や、ICカードリーダーを用意するなど煩雑なため、普通のサラリーマンは確定申告書類を作成し、税務署へ郵送で提出するか、窓口に持参する方法が現実的です。
参考 ICカードリーダー
確定申告書類を作成するために必要なもの
①確定申告書用紙…このあと説明する国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成することで、必要な数字を入力していけば簡単にpdf.が作成されます。あとは自宅のプリンタでA4出力するだけなので、思ったよりも簡単です。税務署に用紙がありますが、手書き手計算だと誤りも発生しやすいので、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成することをお勧めします。
②住民票…取得後6か月以内に居住し、前年の12月31日まで居住していることを確認するために必要です。新住所の区役所や市役所等で取得して下さい。
③年末残高証明書…住宅ローンを組んでいる金融機関より、11月から12月頃に郵送されます。(年末に引き渡しを受けた場合は、翌年1月から2月頃までずれ込みます)但し書きで、再発行しませんと記載があるため、誤ってなくさないよう注意してください。
④全部事項証明書(登記簿謄本に相当)…通常引き渡し後2週間程度で、登記を依頼した司法書士から登記識別情報通知書と一緒に送られてくると思います。緑色のA4ホチキス止めの書類です。ただ、この時点ではすまい給付金の給付申請で原本を使用してしまっている(参考 別記事「すまい給付金で20万円ゲットした話すまい給付金で20万円ゲットした体験談)」ことが考えられますので、手元になければ、管轄の法務局で取得する必要があります。法務局のホームページにて、オンラインで請求することも可能ですが、不動産に関する知識がないと難しいと思うので、法務局に出向いて、自宅の全部事項証明書が欲しいといえば、出してくれるはずです。地番という、住所とは違う情報が必要ですが、住所を言えば法務局の人が地番を調べて教えてくれますので、安心してください。
自宅を管轄する法務局は、法務局のホームページ(管轄のご案内)で確認することができます。
手数料は1通につき600円です。
マンションの場合は、区分建物全部事項証明書1通で済みますが、戸建ての場合は、建物の全部事項証明書と土地の全部事項証明書が必要です。また、建売等で私道がある場合は、私道の全部事項証明書も必要です。
⑤売買契約書(写し)…住宅を購入する契約をした際の、売買契約書の写しです。原本は契約時に不動産業者から交付されるはずなので、手元にある契約書をコピーを取る必要があります。
⑥源泉徴収票…サラリーマンの場合、年が明けた1月中旬ころに源泉徴収票が交付されると思います。社印のついた正式な源泉徴収票が必要なので、原本交付に別途社内の申請が必要な場合は、余裕を持って12月中に申請しておきたいところです。
⑦印鑑…認印で構いません。実際は①確定申告書用紙に押印した状態で郵送ないし持参するので、窓口に提出に行く際は、念のため持っていく程度でいいかと思います。
⑧還付金の振込先口座のわかるもの…還付金の振込先口座の通帳の写しでいいかと思います。表紙であれば、金融機関名、支店名、普通預金かどうかの区別、口座番号、口座名義が確認できますので、表紙のコピーを持っていきましょう。①確定申告書用紙に記載する事項なので、税務署によっては、いちいち確認しないところもありますので、念のため持参しましょう。
⑨本人確認書類…なりすましを防ぐため、以下の書類が必要です。
イ.マイナンバーカード(個人番号カード) これ一つで番号確認と身元確認ができます。
マイナンバーカードをお持ちでない場合は、
ロ.通知カード+運転免許証orパスポートor被保険者証等 が必要です。
コピーを用意しましょう。
確定申告書を作成しよう
前述の①から⑨までの書類がそろえば、確定申告書類を作成することができるようになります。
国税庁の確定申告書等作成コーナーのシステムにしたがって、手持ちの書類を参照しながら入力していけば、簡単に確定申告書類を作成することができます。おそらく、30代で日々パソコンと向き合っているサラリーマンであれば、20分くらいで作成できると思います。
リンク先の、青い「作成開始」をクリックすると、作成ウィザードが開きます。
eTAXか書面提出かを選ぶ必要がありますが、普通のサラリーマンであれば、書面提出でいいです。
チェックボックスを確認して次画面へ進むと、
所得税、青色申告決算書、消費税、贈与税と4項目出てきますが、所得税コーナーをクリックします。
次の画面では、
所得がサラリーマンとしての給与のみの方や、住宅ローン控除がサラリーマンとしての給与所得のみでフル活用できる方は青い「給与・年金の方」の作成開始を、住宅ローン控除がサラリーマンとしての給与所得のみでフル活用できず、株等の譲渡所得がある方は、赤の「左記以外の所得がある方」の作成開始をクリックしてください。
後は、表示されたとおりに生年月日などを入力して、進めていきます。
この画面で、適用を受ける控除を選ぶことになりますが、右上の「住宅借入金特別控除」が住宅ローン控除のことですので、「住宅借入金特別控除」にチェックを入れて、次に進みます。
この画面以降は、源泉徴収票を見ながら、データを入力していく作業が続きます。とてもわかりやすく説明が併記されますので、間違いのないように入力を進めていきます。
次の画面では、
こちらを記入していきますが、住宅ローン控除の初年度の確定申告であれば、⑤、⑥は記載がないはずです。⑦は記載不要なので、あるとすれば、④の16歳未満の扶養親族の数です。16歳未満の子供がいる場合は源泉徴収票に人数が記載されているはずなので、16歳未満の子供がいる場合は④にチェックを入れて、次の画面へ進みます。
次の画面では、
給与支払者の情報を記載します。つまり、雇用元です。源泉徴収票の株に住所または所在地および、氏名又は名称が記載されていますので、転記します。
次ページでは確認画面が出ますので、確認して次へ進みます。
その次は、④の16歳未満の扶養親族にチェックボックスを入れた場合、その氏名、続柄、生年月日を入力するページが出てきますので、入力して次に進みます。
次は、今まで入力した結果に基づき、給与の収入金額と所得金額が出ますので、確認して次へ進みます。
続いては、控除の情報を入力していきます。
左上の、住宅借入金等特別控除が住宅ローン控除のことですので、住宅借入金等特別控除の入力するをクリックします。
あとは画面の指示に従って、新築なのかどうかを確認して次へ進み、住宅ローン控除が適用される条件を確認して次へ進みます。
居住を開始した日をプルダウンで選択し、次へ進みます。
適用除外条件を満たさないことを確認したうえで、次に進みます。
次の画面では購入した条件を確認しますが、ほとんどの場合は2から5にチェックが入ると思います。1にチェックが入る場合があるとすると、借地権で建物を建てたり、借地権マンションを購入した場合が考えられます。
次のページは、取得した不動産の情報を入れていきますが、
売買契約書、全部事項証明書、年末残高証明書を見ながら、数字を埋めていきます。
進めていくと、最後に所得税還付額が表示されます。
普通のサラリーマンであれば、源泉徴収票の一番左の源泉徴収税額がすべて還付されるかと思います。
終わりましたら、納税者の情報を入力していきます。
氏名や住所、還付金の振込先口座、マイナンバー等と入力すると、
この画面が出ますので、緑色の「帳票表示・印刷」をクリックすると、確定申告書類がpdf.で作成されます。
あとは、A4サイズでプリントアウトをし、押印が必要な個所に認め印を押捺し、添付書類貼付用紙に源泉徴収票の原本、マイナンバーの通知カードの写し、運転免許証の写しを貼付したら出来上がりです。
後は他の必要書類と一緒に、税務署に持ち込みましょう。
ちなみに、税務署の窓口はその場で書類が整っているかは確認しますが、記載内容まではその場では確認しません。番号付きのクリアファイルにいれておしまいです。私は朝9時半にコインパーキングに車を停めて、税務署へ入り、3人くらい並んでいる窓口並び、書類を提出して口頭で4,5言程度かわして、帰ってきました。コインパーキングに戻ったら経過時間は10分ほどでした。なお、確定申告相談コーナーは長蛇の列ができていました。
確定申告をしてから還付金が振り込まれるまでどれくらいかかるの?
税務署の繁忙期である確定申告期間2月15日~3月15日にかぶってしまうと、税務署も膨大な確定申告書類を処理しなければならないことから、1か月半から2か月程度かかってしまうようです。
繁忙期前の1月4日~2月14日までに提出できれば、大体1か月というところでしょうか。もちろん書類に不備がなければ、の話です。不備がある場合は税務署から電話が来るはずなので、対応しましょう。税務署から電話が来ない場合、不安になりますが書類は順調に処理されているということの裏返しですので、安心して下さい。
実際、私は2月1日に確定申告に行き、税務署員に大体1か月程度かかると思ってくださいといわれました。3月1日に口座を確認したら還付金が入金されており、還付金の振り込みを知らせる国税還付金振込通知書は3月3日に自宅に郵送で届きました。
確定申告で前年の株の譲渡益に伴う特定口座の源泉徴収所得税を取り戻す方法
この方法を使うメリットがある人は、
・住宅ローン控除の枠が、所得税還付ならびに翌年納付の住民税の控除を利用しても、余りが出る
毎年の上限額(最大40万円)≧年末ローン残高の1%>サラリーマンとしての前年に納めた所得税+今年納めるべき住民税(課税総所得の7%(最大136,500円))
・前年に、株の取引で利益が出て、税金を納めている(or確定申告で納める必要がある)
この2点を満たす人です。
株の取り引きの伴う納税は、
①一般口座:確定申告での総合課税(課税所得に対する累進課税)
②特定口座(源泉徴収無し):確定申告での申告分離課税(利益に対して20.315%)
③特定口座(源泉徴収有り):確定申告不要の源泉徴収(利益に対して20.315%)
の3パターンがありますが、住宅ローン控除は税額控除であるため、どのパターンでも利用可能です。
よくあるのは、株取引の利益や、配当が出る都度、20.315%の税金が天引きされる③特定口座(源泉徴収有り)だと思います。確定申告不要で手間いらず、税率もNISA開始以前は10%でしたし、NISA開始後はNISA口座とセットで特定口座(源泉徴収有り)を推奨されていました。
①一般口座:確定申告での総合課税の場合と、②特定口座(源泉徴収無し):確定申告での申告分離課税は、どちらにせよ3月15日までに確定申告が必要ですので、普通に確定申告をすれば必然的に住宅ローン控除を受けることができます。
③特定口座(源泉徴収有り):確定申告不要の源泉徴収の場合だけ、普通にしていると確定申告をしなくても都度粗利の20.315%の税金が天引きされるため、そのままにしてしまいがちですが、確定申告をすることで住宅ローン控除を受けることができます。
必要なものは、年明け1月中旬に証券会社より送付されてくる「年間取引報告書」です。ちなみに、野村ネット&コールを利用している私の場合、1月17日に野村證券より発送され、転居に伴う転送手続きにより、手元に届いたのは1月20日でした。
「年間取引報告書」を用意したら、国税庁の確定申告書等作成コーナーのシステムの入力を進めていき、
真ん中の、「左記以外の所得がある方」の作成開始をクリックします。
そうすると、先ほど説明した給与所得の入力の他に、
下にスクロールしていくと、
分離課税の所得欄に、「株式等の譲渡所得等」がありますので、「入力する」をクリックします。
あとは「年間取引報告書」を参照しながら、ウィザードの促すとおりに入力を進めていくと、前年の株の譲渡益に伴う源泉徴収所得税を還付する内容で、確定申告書類が出てきますので、税務署に提出します。
この場合、税務署に持ち込む書類として「年間取引報告書」も必要となりますのでお忘れなく。
この方法で、私はサラリーマンとしての所得税90,200円全額だけでなく、株で出た利益により源泉徴収された所得税からも住宅ローン控除額いっぱい還付され、合計で224,710円が払いすぎた税金として還付されました。
まとめ
・住宅ローン控除の枠が、所得税還付ならびに翌年納付の住民税の控除を利用しても、余りが出る
毎年の上限額(最大40万円)≧年末ローン残高の1%>サラリーマンとしての前年に納めた所得税+今年納めるべき住民税(課税総所得の7%(最大136,500円))
・前年に、株の取引で利益が出て、税金を納めている(or確定申告で納める必要がある)
という条件を満たしていれば、平成28年分のみならず、平成24年分~平成28年分までの計5年分までさかのぼって還付申告を行うことが可能です。払いすぎた所得税がある場合は、還付申告を行いましょう。
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もちどらもセミプロレベルの知識は持っているので、ほんとうはアドバイスをしたいのですが、個別具体的な税務相談は税理士にしかできない業務なので、もっと詳しく知りたい方は税理士にご相談ください。
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以上、お読みいただきありがとうございました。
コメント
[…] 所得税は住宅ローン控除で取り戻す予定でいますが、それでも払い過ぎ感は否めません。 […]
by 2017年度6月末までの株の収益と保有銘柄の評価損益 – もちどらどっとこむ 2017年7月2日 5:54 AM
[…] 細かい話は過去記事に載せているので、 […]
by サラリーマンでも株の利益を確定申告すると住宅ローン控除が使える場合 | もちどらどっとこむ 2017年7月15日 9:59 PM
株の利益分が所得に加算されるので、市民税上がってしまいませんでしたか?そこで迷って税務署に相談したら私の場合は戻るのと追加で支払う分が同じくらいだったので見送ることにしました。。
by kota 2018年2月21日 3:31 PM
コメントありがとうございます。
申告分離課税なので、所得税と住民税は計20%のまま、だと思います。
個人的な体験では、2016年分を還付申告しましたが、2017年の住民税は前年と同程度でした。
ただし、国民健康保険料の計算上は所得が上がるので、デメリットはそこくらいだと思います。
by mochidra 2018年2月25日 8:17 AM