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カナダとメキシコを見るに日米貿易協議(TAG)の先行きは暗い 自動車輸出台数制限と為替条項と中国条項

time 2018/10/02

9月27日(日本では26日)に開催された日米首脳会談で、
安倍首相が自動車への高関税賦課を回避した!
交渉期間中の自動車への高関税賦課をしない旨を確認した!
農業分野での譲歩もTPPで示したのが限度!
FTAは回避した。二国間交渉だがこれはTAGだ。
と大々的に報道された。
が、実際はどうなのだろう。

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日米首脳会談共同宣言を見るに、「確約」ではなく「控える」

どうも日米のメディアで論調が違うので、共同宣言そのものを見てみると

5. The agreement mentioned above is designed to be mutually beneficial, and, in conducting those negotiations, the United States and Japan will respect positions of the other government:
For the United States, market access outcomes in the motor vehicle sector will be designed to increase production and jobs in the United States in the motor vehicle industries; and
For Japan, with regard to agricultural, forestry, and fishery products, outcomes related to market access as reflected in Japan’s previous economic partnership agreements constitute the maximum level.

5.上記協定は相互に有益であるように設計されており、これらの交渉を行う際に、米国と日本は他国政府の立場を尊重する。
米国の場合、自動車産業における市場アクセスの成果は、自動車産業における米国の生産と雇用を増加させるように設計される。そして
日本にとって、農林水産物に関しては、日本の過去の経済連携協定に反映された市場アクセスに関連する結果が最大レベルとなっている。(google翻訳)

引用元 米国ホワイトハウス https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/joint-statement-united-states-japan/

相手国政府の立場に敬意を払う(respect)、と言うだけであり、決して神聖不可侵ではない。
敬意を払ったうえで、交渉に臨むわけなので、農業分野でTPP以上の譲歩を迫られることは当然ありうる。
日本がほかの条件をのめば、アメリカもTPPを限度で勘弁してくれるだろう。

自動車への関税25%付加も回避したかどうかは不透明

首相は会談後の記者会見で「日本の自動車に対して、米通商拡大法232条に基づく追加関税が課されることはないことを確認した」と強調した。共同声明には「協議が行われている間、声明の精神に反する行動を取らない」と明記した。

引用元 日経新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35807570X20C18A9MM0000/

とある。「車関税を当面回避」という趣旨だが、これも共同声明を見るに

7. The United States and Japan will conduct these discussions based on mutual trust, and refrain from taking measures against the spirit of this joint statement during the process of these consultations. In addition, we will make efforts for the early solution of other tariff-related issues.

7.米国と日本は、これらの協議の過程で、相互信頼に基づいてこれらの議論を行い、この共同声明の精神に反する措置を控える。また、その他の関税関連問題の早期解決にも努めてまいります。(google翻訳)

引用元 米国ホワイトハウス https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/joint-statement-united-states-japan/

遠慮する(refrain from)であり、止める(stop)ではない。とても安倍首相の言うように「日本の自動車に対して、米通商拡大法232条に基づく追加関税が課されることはないことを確認した」と言い切れるほどの内容にはなっていない。

アメリカは日本に要求をのませるためなら、平気で自動車への高関税をチラつかせてくるだろう。

カナダとメキシコは結局どうなったか NAFTAからUSMCAに

9月30日ギリギリでカナダが折れて合意したアメリカ、カナダ、メキシコ間の貿易協定は、アメリカへの自動車輸出に台数制限が設けられた。(各260万台)

制限台数以内なら25%の追加関税の適用は除外される。裏を返せば、制限台数を超えると高関税を課される。

また、原産地規定も強化62.5%⇒75%(メキシコで生産し、アメリカへ輸出している日本車の約32%はこの条件を満たせていないため関税対象)

工賃基準の新設(時給16ドルで雇わないと関税対象。日本企業もメキシコやカナダでの工賃を引き上げるか、アメリカに生産拠点を移すかが必要となる。原価があがる。)

日本の自動車企業はかなり打撃が大きい内容。カナダはトヨタとホンダで去年は100万台生産(うち77万台をアメリカに輸出)、メキシコは日産、ホンダ、マツダ、トヨタが去年は120万台ほど生産(うち約70万台をアメリカに輸出)している。

カナダとメキシコの話だから日本はあまり関係ないような雰囲気が漂っているが、かなり日本の自動車業界が狙い撃ちされている気がする。

農業分野はカナダはTPPで過去合意した水準に譲歩。

メキシコとの合意段階では、為替条項が入っていたとされる。

日米TAGに為替条項が入るととてもまずい

アメリカのトランプ大統領は常々日本の円安を批判してきたし、日本を為替操作国一歩手前の為替監視国に指定している。この為替操作国認定をチラつかせながらの交渉は非常に強い。

為替条項は米韓FTAの付帯条項に見え始め、今回メキシコとの合意の中でも語られた。

名目レートでも円安だ!

日本円は過去20年の平均値より25%近くも安い!

と言っているだけあって、為替条項を入れられたら、円安誘導はできなくなる。とりあえず円安にして自動車輸出やインバウンドで稼いだアベノミクスは立ち行かなくなる。

25%是正されたら1ドル86円になってしまう。

日銀緩和も引き締める方向なので、円安は進まない。

USMCAに見る中国条項

さらには、中国と貿易している国を締め出す、中国条項なるものがUSMCAに盛り込まれた。
中国と名指しはしていないものの、「市場経済を採用しない国」なので、中国を指している。


中国条項(毒薬条項:USMCA第32条10項)
・市場経済でない国との自由貿易協議を望む参加国は協議開始の3カ月前に他の2カ国に通知することを義務付け
・交渉当事国でない他の2カ国は自由貿易協定の調印前に検証が可能
・USMCAに加盟する1国と非市場経済国との間に結ばれた新しい協定が発効した場合は、他の2カ国が3カ国から成るUSMCAを打ち切ることができる

つまり、中国と貿易するなら、うち(アメリカ)との貿易は打ち切りにしちゃうかもよ!という内容。

これをアメリカは、日本やEUに求めてくる。
中国を締め出そうとしている。

日米TAGはFTAになるし自動車輸出に台数制限がかかる

日本サイドは、この二国間協議はFTAではなく、TAGだ。と強弁しているが、結局アメリカはFTAを求めているので、TAGは早晩FTAになる。(アメリカに二国間交渉に引きずり込まれた時点で、もう負け。合従連衡とはこのことか。)

自動車への25%高関税や為替操作国認定をテコに、自動車輸出の台数制限、現地生産の米国製部品の使用割合の増加、現地雇用者の賃金アップを飲み、農業分野の開放をし、為替条項も入る。もちろん米国製の武器もいっぱい購入させられる。

強烈に脅して自分の都合の良いディールを引き出すトランプ大統領。
北朝鮮問題も、トランプは燃料投下しまくって日本に武器を売りつけているし、「友人」習近平に対しても激烈な貿易戦争を仕掛けている。
そんなトランプ一人勝ちの結果が目に見えている。

円安は終わる。

円高で農業捨てて自動車輸出も捨てて日本は変われるか

人口が減少していき、高齢者が激増し、若者が激減する中で、円安に頼らず、自動車輸出に頼らず、農業を保護せずに日本を成長させる。

そんなことが可能なのだろうか。でも、そうシフトしていかないと、日本は沈んで行ってしまうと思う。

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