2020/06/02
株やFXをやっているというと、ギャンブルだという人がいます。
ギャンブルとは競馬やパチンコ、カジノなどの運に左右されるきわめて投機性の高いものです。
株やFXもギャンブルなのか。
それとも違うのか。
極めて難しい話です。
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CASE1 退職金を東京電力株へ突っ込んだ人の話
今を生きる私たちは、東京電力の現在を知っています。
2011年3月11日に東日本大震災が起きました。
東日本大震災という呼称が定着していますが、あの災害は震災よりも津波による被害が甚大でした。
死者15,894人のうち、溺死が92.4%を占めます。(参照:内閣府HPみんなで減災)
このレベルの津波は869年貞観地震以来だそうであり、1000年に一度レベルの異常な津波だったそうです。
東京電力の福島第一原子力発電所も、停電し、停電に備えて非常電源が入っていた建物が津波で流されてしまい、完全に電力を喪失しました。
核燃料を冷やすことができなくなり、メルトダウンに至ったわけですが、当時それを予測できたかどうか。
2010年の東京電力株価は2450円~1900円であり、年間配当は60円でした。
2000円で購入していれば3%の配当利回りであり、電力会社はなくならないインフラです。
超優良銘柄でした。
就活でも大人気でしたし、広告料も毎年250億円の予算をつぎ込むトップクラスの大企業です。
たとえば退職金2000万円をつぎ込めば毎年配当が60万円見込むことができ、1億円つぎ込めば配当は年間300万円。
それが2011年3月11日を境に株価は急落し、一時120円まで落ちました。
東電は非難区域への賠償、日本全国の原発の停止、火力発電のフル稼働。
まさか大津波で原発がメルトダウンして株価急落するなんて、予想できた人はほぼいなかったでしょう。
CASE2 殺人エアバッグと呼ばれたタカタ
タカタはもともとは滋賀県にあった繊維業者であり、HONDAの本田宗一郎に請われて車両部品業界へ進出しシートベルトを作り、エアバッグを作って売上高7000億円企業へと巨大化していきました。
タカタが作ったシートベルト、エアバッグは車に拠る重大事故時に運転者や同乗者の命を救ってきました。
シートベルトがないと事故が起きた時フロントガラスを突き破って吹っ飛んで行ってしまいますし、エアバッグがないとハンドルに顔面を強打します。
事故が起きないようにするのが何よりですが、万が一事故を起こした際、乗車している人の被害を抑えることができる重要な商品です。
しかしながら、アメリカでエアバッグを原因とする死亡事故が発生したとされ、暗転していきます。
タカタ社が作ったエアバッグ、緊急時に瞬間的にエアバッグを膨らませるために火薬が必要になりますが、それを他メーカーとは違い硝酸アンモニウムという素材を使って作りました。
それがとある条件下で作動すると、劣化した金属片が飛び散り最悪の場合死に至るという事件がこの10年で16件発生しました。
エアバッグが作動するくらいの大事故が発生した際、死亡した運転者にエアバッグの材料であった金属片が突き刺さっていたそうです。
不思議なことに死亡事故が起きたとされる車は型式の古いHONDAのアコードで、高温多湿な環境に長期間さらされた車に集中していますが、世論は完成車メーカーであるHONDAではなく、その下の部品メーカーであるタカタを殺人エアバッグメーカーとして悪者扱いです。
タカタのエアバッグそのものが悪かったのか、HONDAの要求した設計が悪かったのか、HONDAの組立時の話なのか、いまいちよくわかりません。
シートベルトとエアバッグ、そしてチャイルドシートで何千何万もの人命を救ってきた企業でも、10年前の株価の1/8程度まで暴落します。
ラザードによる再建計画は大幅に遅れており、米国のチャプター11のみならず、国内でも法的整理がささやかれています。
法的整理になれば株価はゼロです。
(2017年6月18日追記)
ついに民事再生法適用による法的整理報道が流れました。週明け6月19日からJALやスカイマークと同じように2桁、1桁まで急降下したうえで、マネーゲーム化し、いずれ価値はゼロになります。
スイスフランの暴騰(スイスフランショック)
今度はFXの話です。
FXは2国間の通貨を売買し、その為替差益で儲けるというものです。
簡単に言えば、1ドル100円の時に、100万円で1万ドルを買います。
1ドルが110円になった時(つまり、円安)に、ドルを売って円を買い戻すと、110万円になります。
10万円儲かりました。ということになります。
実際は一気に10円円安に振れる(10%)なんてことはあまりないですが、レバレッジというテコがあり、自分の持っている金の何倍もの額で取引ができます。
いまは国内FXはレバレッジ25倍ですので、100万円しかなくても、2500万円分の取引ができます。利益も損失も25倍のレバレッジをかけることができます。
で、スイスフランです。
リーマンショック、欧州危機に対応するため、ECBもFRBも緩和政策を取りました。つまユーロやドルは売られまくって、代わりに円やスイスフランが買われることになります。
スイス中銀はスイスフラン高になっては困るので、ユーロスイス相場を1.200と設定し、防衛をしました。
それを3年間続けたあと、2015年1月15日に突然撤廃。ユーロスイス相場は21分で最大41%急落しました。
スイス中銀が防衛を止めたので、スイスフランが急騰したんですね。
1スイスフランが115円だったのが、一瞬で1スイスフランが166円になる。
115万円を元手に1万スイスフランを買っていたら41万円の利益が。さらにレバレッジ25倍なら1025万円の利益が生まれたわけです。
元手に対してプラス891%です。
逆のポジションなら115万円の元手に対して1025万円のマイナスです。元手をすべて失った上に910万円の借金を負うわけですね。そのまえにロスカットされてしまいますが。
まぐれはありうる
てきとーに株やFXに手を出すのは投機以外の何物でもありませんが、ある程度のギャンブル性を排除することで、投機性を下げることは可能です。
異常なほど下がり続けたり上がり続けたりする銘柄に対して、純資産、収益、今までの株価の推移を参考にして基準値を割り出し、それに比べて割高か割安かで投資判断を下すことはできます。
ベンジャミン・グレアムのいう「安全域」というものです。
(ベンジャミン・グレアムはウォーレン・バフェットの師とも言われる人物。その著書「賢明なる投資家」はウォーレン・バフェットが最良の書と絶賛している)
ですが、それだけの注意を払ってもまぐれに振り回されることがあります。
ブラックスワン現象というものですが、下手にくらうと一発退場もあり得ます。
(ブラックスワン(黒い白鳥)現象については、デリバティブトレーダー、ナシーム・N・タレブの著書「まぐれ」「ブラックスワン」に詳しい)
洪水に備えよ
ノアの方舟みたいな話ですが、自分の資産を一瞬で消し飛ばす洪水は起こりえます。
リーマンショック時にはまだ株に手を出していなくて、アベノミクススタートともに株に手を出した私は、ただ運がいいだけかもしれません。
そして10年に一度の暴落で一気に吹き飛んでしまうかもしれません。
ITの発展でいろいろなビジネスが短命化し新陳代謝が激しく、また平均寿命が延びた現代に生きる我々は、洪水に遭遇してしまう可能性があります。
株やFXは勉強することでギャンブル性を減らしていくことは可能ですが、ゼロにはできません。
いざという時に備えて、小さな方舟を用意しておきましょう。
コメント
[…] 大企業でも平気でつぶれますし、「今まで潰れなかったから」は理由になりません。 […]
by 会社を辞めて起業するリスクは大したことない。 – もちどらどっとこむ 2017年7月8日 9:02 AM